田中研究室


我々は、約30年以上にわたり高齢者および中枢神経疾患者のための姿勢・歩行に関する病態(臨床)運動学、人間工学、およびリハビリテーション工学・福祉工学と関連させながら研究を遂行してきた。この間、一貫して、臨床現場において高齢化に伴う運動と感覚の障害を福祉工学の観点から支援する手法と技術の研究に携わっている。とくに、感覚刺激による姿勢制御のメカニズムを解析し、その研究成果を病院等の現場におけるリハビリ治療に活かしてきている。主な研究実績としては、第1に「高齢者の感覚フィードバックによるバランストレーニングの研究」が挙げられる。これは、立位バランス検査トレーニング用医療機器を産官学連携のもとで実用化し、製品化への道を拓いている。第2に「高次脳機能障害における空間無視者の日常生活訓練システムの研究」が挙げられる。これは、視空間の認知障害を有する患者は歩行や車椅子操作に障害を来すためこのバリアーを解消するうえでバーチャルリアリティにおける3次元視覚ディスプレイを利用して半側空間無視の症状を解析するとともに、リハビリ手法を開拓したものである。これらの研究は、MITの認知系研究者との共同研究に結びつき、遠隔リハビリテーションシステムや認知症注意喚起システムの研究へ発展している。

 

その他に「地域からの要望による産官学連携研究」の実績があり、主としてNEDOや経済産業局による支援を受けて、北海道立総合研究機構工業試験場との共同研究である凍結路面用ワンタッチ式杖、腰痛予防用除雪器具、農作業軽労化用具、移動・移乗支援機器など多くの福祉用具の実用化・製品化に貢献している。2012年より、北海道立総合研究機構工業試験場、北海道立工業技術センターおよび函館市内の中小企業との共同研究(健常人・高齢者・障害者のための呼吸訓練用マスク開発・製品化)も実施している。このように、本研究所は高齢者および障害者・患者のための姿勢・歩行、日常生活支援に関する病態(臨床)運動学、人間工学、およびリハビリテーション工学・福祉工学を関連させながら研究を遂行してきており。また、その実践の過程において、我々は、他分野の研究者とのネットワークに基づく、分野横断的な研究を展開してきている。